子供たちの庭 “Nøkken”:デンマークのシュタイナー幼稚園

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シュタイナー教育って知っていますか?

日本では耳慣れない名前ですが、アメリカやデンマークなどでは、あのスティーブ・ジョブスが受けた教育として有名なモンテッソーリと並んでよく耳にすることがあります。最近だと日本でも俳優さんなどでシュタイナー教育を受けたという人がちらちら表舞台に出てきて、耳にする機会もあるかもしれませんが。

私がシュタイナー教育に出会ったのは、ヒューストン時代にお世話になったドゥーラの木村章鼓(現在はロンドン在住)さんという方から、「めいちゃん、もしかしたら教育と芸術が融合したシュタイナー教育、好きかもしれない」と彼女のお子さんたちも通っていたシュタイナーについていろいろとお話を聞いたのが始まりでした。私が興味を持ったのは、彼らの教育法は全て非常に芸術や自然と結びついており、数学でさえもアートと共に美しさを小さいころから教えてもらえ、自分のワークショップのコンセプトに通じるのを感じたのがきっかけでした。

シュタイナー教育についても語りだすと長いので、知らぬ方はまずこちら(Wikipedia)をどうぞ。

さて、今日の本題は、デンマークにももちろんシュタイナー幼稚園があるのですが、その中でも”デンマーク式”のシュタイナー幼稚園としても有名なNøkken(ノッケン)に行き、その創設者であるヘレ・ヘックマンさん(Helle Heckmann)にお会いしてきたので、感じたことをまとめておこうと思うわけです。

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Nøkkenは中心地から30分ほど北に行った、緑の多い住宅街の中にあります。一見すると普通のおうちみたい。ちなみに右の青の建物も、左のオレンジの建物もNøkkenの施設。

Nøkkenのコンセプトは「子供たちの庭」。Helleさんを筆頭に、全員で大きな家族のようになれるようにと、大きな家に、大きな庭を自分で作り上げて行ったそう。一面に木々や花、雑草などもたくさん生えているのだけれど、どれもこれも自分で苗から育てたということで、この庭くらいに成長するまでになんと20年もの月日が流れたというから驚き!そして、それだけの愛情もまた、そこにいるだけで感じるあたたかい庭です。

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ところどころにあるテーブルで、お外でみんなでごはんが日課

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奥にはニワトリさんもいて、新鮮な卵が毎日とれるそうです

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1階が幼稚園の園舎、2階がHelleさんの自宅。素敵すぎて息をのむ。

少し中に入ると、ただただ広い、庭が広がっています。ところどころにある木は全て果実のなる木で全部で30本。それぞれ実がなる時期が異なり、毎月のようにりんごがなったり、プラムがなったり、梨がなったりしてそれらを子供たちはおやつにして食べるのだとか。なんて素敵な庭!!昔、近所の公園にあった木イチゴを必死にあつめて食べていたことを思い出した。また、季節のうつりかわりによって咲く花や、伸びる草木などが違う。また、木が年老いて子供たちが遊べる大きさでなくなるとそれを伐採し、またそこに新しい木の苗を植えて、10年間育てる。

「常に10年後のことを考えながら、子供たちの庭を作るんです」

なので、Nøkkenができてもう30年という月日がたつけれど、庭の表情はずっと変わり続けているのだそう。この時にも、植えたばかりの苗木が一本、ありました。

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庭に到着して、真っ先にHelleさんが見せてくれたのがこの作業台と雨よけのパラソル。これだけは絶対になくてはいけないといいます。その理由は、彼女はここですべての作業、たとえば朝ごはんを作る、お昼ごはんを用意する、フルーツを切る、お皿を洗う。全ての作業はここで、子供たちと同じ空間でやることができる。とにかく子供たちだけ外で遊ばせて自分はキッチンにこもったりすることがないように、外に作業台を置いたんだそうです。


そしてこれらが子供たちの遊び場。とにかく毎日、雨でも雪でも外へ出て遊びます。自然の中で遊び、そこから全身を使って子供たちは様々なことを学んでいくそうです。遊具も自分たちで自然のものを使って遊びます。ブランコも、座るところはありません。縄だけ。必要最低限のものでも、これだけの自然があったら、もうあきることなく子供たちは遊び続けるんだろうなぁ。

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外から室内へ入る入口、ここで靴を脱ぎ、コートを脱ぎ、手を洗って中へ入ります。この空間もHelleさんのお気に入り。普通だったら外から中への入り口は狭くて暗くなりがちだけれど、とにかく広く、太陽の光をたっぷり入れて、自然が見えるようにしたかったんだとか。

「常にこどもたちは出来る限り自然の中にいて、太陽の光を浴びて、雨に打たれて遊ぶべきだわ。だってこどもだもの!彼らはいつだって自然からたくさんのことを学ぶわ。なので常に自然と触れていられるようにしているんです。」

室内でのアクティビティの為のスペースも、基本的には電灯はなく、暗くなっても灯りはランタンや、ろうそくの火をともすそう。暖房は木を燃やす古いタイプのストーブ。床に座ってみんなでパーティーをしたり、木の椅子に座ってみんなでお話を聞いたり。室内であっても、まるで自然の中にそのまま住んでいるような、そんな感覚のする彼女のこだわりが随所に見える、本当に本当に素敵なおうち。

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ひとしきり園内を散策した後には、2階のお部屋で紅茶を出してくれました。

常に彼女は本当に大きなお母さん、またはたくさんの子供と孫に囲まれたおばあちゃんのようで、包み込むそのあたたかさは表情から、その空気感からあふれていました。初めて会った私にもまるで長年の友人のように接してくれ、気が付けば私もひとりの母親として、ひとりの教育者としてうっかり身の上の相談などしてしまったくらい(笑)

「私は、大きな家族をここに作りたかったの」

そういう彼女は、まさにビック・マザー。子供たちに会えたわけではないんだけれど、写真をみれば一目瞭然。まさに大きな家族のように、本当に本当にあったかい場所。

デンマークでも、親たちは子供たちの親である時間以上に、組織や会社の為に働く時間をとるようになってしまった。では誰が彼らを見守り続ける”親”になれる?そう思った時に、この幼稚園を作ることを決めたんだそうです。

彼女の子供たちへの接し方は、非常に強い信頼と共に見守るということ。そして、何かを決めつけることはせずに、

「あなたはだあれ?」

という問いを投げかけ続けるんだそうです。その子は何が好きなんだろうか。どうやって学んでいく子なんだろうか。答えの形を決めつけているのはいつでも大人たちで、子供たちのその”あるがまま”を見つめてあげて、そうすると驚くような新しい答えが返ってくるよ、と。子供たちは自分が一番自分のことを知っている。何を学びたいのかも、いつそれが必要なのかも。大人が何かを強いれば、こどもは反発するだろう。でも大人が隣でそっとその可能性を教えてあげて、機会を与えてやりたいようにやらせてあげることができるなら、彼らはある時、自分で必要なタイミングで必ず学び始めるから。

自分の心の声でなく、既存の”あたりまえ”のことであったり、誰かから言われたことであったりがいつも私の思考に影響を及ぼし、自分自身がどうしたいのか、さらに、全く別の人格である”息子自身がどうしたいのか”を見る余裕などなくなってしまっていたかもしれない。

「私がいう、育児における5つの黄金の鍵(良質な睡眠、体のムーブメント、食事、生活のリズム、そしてケア)は、とってもシンプルだけれど実現するのは簡単なことではない。でも、ゆっくりでいいのよ。ひとつひとつ、できることを見つければいい。」

Open your mind.
Don’t push the child.
Go Slow.

私が還りたい世界は、ここにあるという気がした。
でもできていない、その理由はなんなんだろう。
今はまだわからないけれど、一歩一歩、自分らしく近づいていけたらなぁと思う。

彼女の提唱する育児スタイル:“Slow Parenting”“5 Golden Key”は、シュタイナーの枠を超えてとってもとっても素敵なものです。世界中で講演をされている彼女も、まだ日本へは上陸したことがないと言っていました。親にとっても、教育者にとってもストレスがいっぱいの日本の現状には、彼女の考える育児の在り方は非常に学びが多く、取り入れることによって幸せになれる子供たちや、親や教育者たちも多いでしょう。今だからこそと森のようちえんへの考えも少しずつ広まっていますが、興味のある方、良かったらぜひぜひ、一緒に勉強しましょう(^ ^)

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